この記事は『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』として書籍化されています。
僕とユーリはいっしょに円周率を手で求めているところ。 でも、数学読み物に書いてある《グラフ用紙に描いた円のマス目を数える》という方法では、 あまり正確に求められなかった。
ユーリ「円周率を調べるのに、もっと楽な方法ないのー? ねーお兄ちゃーん」(ユサユサ)
僕「机ゆさぶるなよ」
ユーリ「ねー、考えよーよ!」
僕「そうだなあ……」
ユーリ「このままじゃ、ゆるさぬぞよ」
僕「すでにキャラ不明だぞ」
ユーリ「だって、半径 $50$ の円を使って求めた円周率の範囲でも、こんなに幅があるんだもん。 $3.14$ は遠いにゃ……」
半径 $50$ の円を使って求めた円周率の範囲
$$ 3.0544 < \pi < 3.1952 $$
円周率は $3.0544$ より大きくて、 $3.1952$ より小さい。
僕「そうだ。マス目をひとつひとつ正方形として数えるんじゃなくて、三角形も混ぜたらどうだろう」
ユーリ「どゆこと?」
僕「こういうことだよ。半径 $10$ の円でもかなりいけるんじゃないか?」
ユーリ「そうかにゃあ……」
僕「赤の部分と青の部分の両方を加えてみると、円周率よりも少し大きい値になるはずだよ。 ええと、赤の部分が、 $1+4+6+\frac{7 \times 7}{2} = 35.5$ で、 青の部分が、 $\frac{1 \times 4}{2} + 1 + \frac{1 \times 1}{2} + \frac{1 \times 1}{2} = 4$ だ」
ユーリ「……」
僕「これは $8$ 分の $1$ 円だから、 $(35.5 + 4) \times 8 = 316$ だね。だから……」
$$ \begin{align*} \REMTEXT{《円周率より大きい数》} &= \frac{316}{10 \times 10} \\ &= \frac{316}{100} \\ &= 3.16 \\ \end{align*} $$ユーリ「……」
僕「だから、《円周率より大きい数》として $3.16$ を得た」
ユーリ「……」
僕「ユーリ。寝てるの?」
ユーリ「寝てないけど…… $3.16$ でしょ? 別の方法はないの? $3.14$ は遠いにゃ……」
僕「別の方法もあるよ」
ユーリ「どゆの?」
僕「段ボールを使う方法」
ユーリ「段ボール?!」
僕「こんなふうに、正方形に段ボールを切る」
ユーリ「なにこの白い線」
僕「これは段ボールにもとから付いてた線。関係ないよ」
ユーリ「ほーほー」
僕「切ったら、正方形の重さを量る。母さんが使っている台所用のはかりでいいんじゃないかな。えっと、 $41$ グラムあるな」
ユーリ「ふむふむ」
僕「次に、正方形に内接する円を描く」
ユーリ「ないせつ?」
僕「正方形の中にぴったり収まる円だよ……あれ、コンパスじゃ無理か。中心にピンを打って、糸を使って……円を描く」
ユーリ「ゆがんでるね」
僕「(ミルカさんみたいなことを言うなあ……)難しいんだよ。そしてハサミで円を切る」
ユーリ「ひどく、ゆがんでるね」
僕「そして重さを……ええと、 $31$ グラムだね」
ユーリ「あ、わかった! 面積じゃなくて重さを使うんだね」
僕「正解! 《半径が $r$ の円の面積》と《一辺が $2r$ の正方形の面積》の代わりに、 《半径が $r$ の円の段ボールの重さ》と《一辺が $2r$ の正方形の段ボールの重さ》を使う。面積と重さが比例すると仮定するけど」
$$ \begin{align*} \REMTEXT{《半径が$r$の円の面積$S$》} &= \pi r^2 \\ \REMTEXT{《一辺が$2r$の正方形の面積$T$》} &= (2r)^2 = 4r^2 \\ \end{align*} $$ $$ \frac{S}{T} = \frac{\pi r^2}{4r^2} = \frac{\pi}{4} $$僕「だから、 $\pi = \frac{S}{T} \times 4$ となる」
ユーリ「割り算して $4$ 倍すればいいってこと?」
僕「そうだね。面積の代わりに重さを使って、円を正方形で割って $4$ 倍する。 円が $31$ グラムで、正方形が $41$ グラムだったから……電卓使うか」
$$ \frac{31}{41} \times 4 = 3.02439\cdots $$ユーリ「……」
僕「……」
ユーリ「ねえ。お兄ちゃん……」
僕「なに? ユーリ……」
ユーリ「$3.02$ じゃん! ぜんぜんだめじゃん! $3.14$ は遠いにゃ……」
僕「わかった。じゃあ、図を描いたり重さを量ったりするのはもうやめよう。その代わりにアルキメデスの方法を使おう」
ユーリ「あるきめです?」
僕「アルキメデスの方法では円に内接する正 $n$ 角形と外接する正 $n$ 角形を使う。 この図は $n = 6$ のときの図だね」
ユーリ「ふーん。そんでまた重さはかるの?」
僕「いやいや、量らないって。計算で円周率に近い数を求めるんだよ。僕たちはいま、円周率が入っている範囲を求めようとしている。 アルキメデスの方法ではこんな不等式を使う」
$$ \REMTEXT{内接正$n$角形のまわりの長さ(赤)} < \REMTEXT{円周} < \REMTEXT{外接正$n$角形のまわりの長さ(青)} $$ユーリ「ほほー」
僕「計算しやすいように $2$ 倍しようかな。 《内接正 $n$ 角形のまわりの長さ》を $2L_n$ と置いて、 《外接正 $n$ 角形のまわりの長さ》を $2M_n$ と置いて、 $n = 6$ のとき、こんな式が成り立つよ」
$$ 2L_6 < 2\pi < 2M_6 $$ユーリ「これは、なんで?」
僕「$2L_6$ は《内接正 $6$ 角形のまわりの長さ》で、 $2M_6$ は《外接正 $6$ 角形のまわりの長さ》で、 真ん中の $2\pi$ というのは半径が $1$ の円の円周。 $2\pi r$ で $r = 1$ だから、 $2\pi$」
ユーリ「なるほど」
僕「$2$ で割れば、こんな式ができる」
$$ L_6 < \pi < M_6 $$ユーリ「それで?」
僕「正 $12$ 角形について考えると、正 $6$ 角形と円の間に入って、こういう式ができる」
$$ L_6 < \underline{L_{12}} < \pi < \underline{M_{12}} < M_6 $$ユーリ「あ」
僕「わかる? $n = 6$ に比べて範囲が狭くなるんだよ」
ユーリ「なんとなく」
僕「これを繰り返すと、はさみうちができる」
ユーリ「ふーん。でもまた $3.02$ とか出るんだとやだなー」
僕「信用してないな。今度は小数点以下第二位まで、つまり $3.14$ までは正確に求められたはずだよ」
ユーリ「ほんと? そんならやって!」
僕「アルキメデスは正 $96$ 角形を作ったんだ」
ユーリ「正 $96$ 角形……ほとんど円じゃないの、それ」
僕「円に近いから、円周率に近い値が求められるんだよ」
ユーリ「でも、正 $96$ 角形とか中途半端な数じゃなく、正 $100$ 角形にすればよかったのに」
僕「$96$ には意味があるんだよ。アルキメデスは正 $6$ 角形から始めて……」
$$ 6 \to 12 \to 24 \to 48 \to 96 $$ユーリ「あ、 $2$ 倍」
僕「そう。数を $2$ 倍ずつ増やしていったんだ。 でも、実際に正 $96$ 角形を描いたわけじゃない。 そうじゃなくて、正 $n$ 角形から正 $2n$ 角形を作り出す方法を使うことにしたんだ」
ユーリ「《正 $n$ 角形から正 $2n$ 角形を作り出す》って意味わかんない」
僕「たとえばこんなふうになる。これは《内接正 $6$ 角形》(オレンジ)から《内接正 $12$ 角形》(グリーン)を作っているところ」
ユーリ「……」
僕「さっきは $6$ から $12$ にして範囲を狭くしたけど、それを繰り返すんだ」
$$ L_6 < L_{12} < L_{24} < L_{48} < L_{96} < \pi < M_{96} < M_{48} < M_{24} < M_{12} < M_6 $$ユーリ「……」
僕「$L_{96}$ と $M_{96}$ が $\pi$ に近づくことを期待して《$L_n$ と $M_n$ を計算していく》。正 $n$ 角形の $n$ を増やしてね」
ユーリ「$n = 96$ まで? それってすっごくたいへんじゃん!」
僕「$1$ ずつ増やしていたら確かに計算が大変だね。だから、 $2$ 倍にしていく。 そのためには、《辺の数を $2$ 倍にしたときに、辺の長さを計算する方法》を見つければいい」
ユーリ「ほほー。でもどうやるの?」
僕「さっきの図だと細かいところがわかりにくいから、拡大した図を描いてみよう」
ユーリ「うん! ……ほんとに $3.14$ まで行けるんだよね?」
僕「内接正 $n$ 角形と、外接正 $n$ 角形の一辺をズームアップするよ」
ユーリ「うん」
僕「この図で、 $O$ は単位円の中心、線分 $AB$ は内接正 $n$ 角形の一辺。そして線分 $A'B'$ は外接正 $n$ 角形の一辺になる」
ユーリ「えーと……うん、わかったよ。これってあれだね。切ったピザの一ピースだね!」
僕「ああ、そうだね。パイじゃなくてピザだ」
ユーリ「……」
僕「いまから考えたいのは、《内接正 $n$ 角形の一辺の長さ》と《外接正 $n$ 角形の一辺の長さ》の関係だよ」
ユーリ「なんでだっけ」
僕「正 $n$ 角形のまわりの長さは、一辺がわかればいい。一辺の長さを $n$ 倍すれば求められるから」
ユーリ「そっか。そりゃそーだね」
僕「僕たちはいま一辺の長さを求めようとしている。 そこで、考えを進めるためにこんなふうにいくつか線を引いて名前をつけてみよう」
ユーリ「一気に複雑になったにゃあ……」
僕「それほどじゃないよ。この図に出てくる文字をひとつひとつ説明するよ」
ユーリ「ふんふん。ところでさ、なんでそんな $P$ とか $P'$ とか考えることにしたの?」
僕「え? 長さを考えたいから、三角形を使おうと思ったんだよ」
ユーリ「ふーん」
僕「次に、線分の長さに名前を付けた」
ユーリ「いーんだけど、なんで名前付けたの? ややこしくないの?」
僕「ややこしくないよ。名前を付けておくと、数式が書きやすくなるんだ」
ユーリ「数式?」
僕「うん。たとえばね、この内接正 $n$ 角形の一辺の長さはわかる?」
ユーリ「わかんない」
僕「がく。え、なんで? よく見てよ」
ユーリ「内接正 $n$ 角形の一辺の長さ……あ、わかった。一辺の長さは $a$ の $2$ 倍だね!」
僕「そうそう。一辺の長さは線分 $AB$ の長さに等しい。 $AP$ と $PB$ の長さは等しいから、線分 $AB$ の長さは $2a$ になる」
ユーリ「うん。ねーお兄ちゃん。三角形 $OAB$ って、二等辺三角形だよね? $OA$ と $OB$ は等しいもん」
僕「そう、そうだよ。なぜ等しいか、いえる?」
ユーリ「円の半径だから」
僕「それでいい! ユーリはよく図を見てるね」
ユーリ「えへへ」
僕「僕はいま、 内接正 $n$ 角形の一辺の長さ(つまり $2a$)から 外接正 $n$ 角形の一辺の長さ(つまり $2a'$)を求めたい。そこで、三角形を考える」
ユーリ「どんな三角形?」
僕「こんな三角形」
ユーリ「三角形 $AOP$ と三角形 $A'OP'$ のこと?」
僕「そうだよ。線分について考えたいから、その線分を一辺に持つ三角形に注目するのは自然だね。 三角形 $AOP$ と三角形 $A'OP'$ の二つをよく見比べる。そうすると、何がわかる?」
ユーリ「おんなじかたち」
僕「そう! そうだね。形は同じで、大きさが違うだけ。三角形の相似だ。 《角 $AOP$ と角 $A'OP'$ が等しい》ことと《角 $APO$ と角 $A'P'O$ が等しい》ことから、 三角形 $AOP$ と三角形 $A'OP'$ は相似だといえる」
ユーリ「……」
僕「三角形 $AOP$ と三角形 $A'OP'$ は相似だから、対応する辺は同じ割合で変化するだろ?」
ユーリ「うん、それはわかる」
僕「辺 $OP$ が、辺 $OP'$ に伸びたら、同じ割合で辺 $AP$ は辺 $A'P'$ に伸びるよね。だからこうなる」
$$ \begin{align*} OP:OP' &= AP:A'P' && \REMTEXT{$OP$→$OP'$と$AP$→$A'P'$との伸びる割合は等しい} \\ p:1 &= AP:A'P' && \REMTEXT{$OP = p, OP' = 1$から} \\ p:1 &= a:a' && \REMTEXT{$AP = a, A'P' = a'$から} \\ \frac{p}{1} &= \frac{a}{a'} && \REMTEXT{比の値を分数で表した} \\ a &= pa' && \REMTEXT{両辺に$a'$を掛けて両辺を交換した} \\ \end{align*} $$僕「これで、《$a$ と $a'$ の関係》がわかった。わかったかな?」
ユーリ「でもね、 $a$ よりも $a'$ の方が長いのに $a = pa'$ って変じゃん!」
僕「いやいや、変じゃないよ。 $p$ は $1$ より小さいんだよ。だから $a = pa'$ でいい」
ユーリ「あ、そっか」
僕「そうだ、僕たちの目的には $a = pa'$ よりも $a' = \frac{a}{p}$ のほうがいいな。 内接正 $n$ 角形の一辺の長さ(の半分)から外接正 $n$ 角形の一辺の長さ(の半分)を得る式になる。 わかったことをまとめておこう」
《まとめ(1)》:内接正 $n$ 角形から外接正 $n$ 角形を得る
内接正 $n$ 角形の一辺の長さを $2a$ とし、外接正 $n$ 角形の一辺の長さを $2a'$ とすると、以下が成り立つ。 $$ a' = \frac{a}{p} $$ ただし、 $p$ は《円の中心から内接正 $n$ 角形の一辺へ降ろした垂線の長さ》とする。
ユーリ「おっけー! ……と思ったけど」
僕「けど?」
ユーリ「その $a' = \frac{a}{p}$ に出てきた $p$ って何だかよくわかんないよね」
僕「え、 $p$ は円の中心から——」
ユーリ「そーじゃなくって! 《$a$ から $a'$ を求める方法》っていってるのに、ヨコから $p$ が出てきて、それで求まったことになるの? なんかごちゃごちゃしてる」
僕「ああ、そういうことか。それじゃ、 $p$ をちゃんと決めればいいんだね。図を見てすぐにわかるけど……」
ユーリ「じー」
僕「ピタゴラスの定理を使えばいいんだよ」
ユーリ「どゆこと?」
僕「三角形 $AOP$ は直角三角形だよね。だからピタゴラスの定理が使える。二辺をそれぞれ $2$ 乗して加えると斜辺の $2$ 乗になるよ」
$$ \begin{align*} OP^2 + AP^2 &= OA^2 && \REMTEXT{直角三角形$AOP$にピタゴラスの定理を使った} \\ p^2 + a^2 &= 1^2 && \REMTEXT{$OP = p, AP = a, OA = 1$だから} \\ a^2 &= 1 - p^2 && \REMTEXT{$p^2$を右辺に移項した} \\ a &= \sqrt{1 - p^2} && \REMTEXT{$a > 0$だから正の平方根を取った} \\ \end{align*} $$ユーリ「ねーお兄ちゃん。ピタゴラスの定理はいいし、式の変形もいいんだけど、なにをやろーとしてるの? それがわかんない」
僕「うんうん。それは式 $a = \sqrt{1 - p^2}$ の読み方になるね。左辺に $a$ が来ていて、右辺に $p$ を使った式が来てる」
ユーリ「うん」
僕「だからこの式 $a = \sqrt{1 - p^2}$ は、《$p$ から $a$ を求める式》といえるよね」
ユーリ「$p$ から $a$ を求める……ふんふん?」
僕「式 $a = \sqrt{1 - p^2}$ はね、《$p$ がわかれば、 $a$ を求められますよ!》とアピールしているんだ」
ユーリ「ほほー! あぴーるだ」
僕「そう考えれば、 $p$ はとても大切な数だね。 $p$ がわかれば $a$ もわかる。それから、 $p$ と $a$ がわかれば $a'$ もわかるんだ」
ユーリ「確かに!」
僕「これもまとめておこう」
《まとめ(2)》:内接正 $n$ 角形
内接正 $n$ 角形の一辺の長さを $2a$ とし、 円の中心から内接正 $n$ 角形の一辺へ降ろした垂線の長さを $p$ とすると、以下が成り立つ。 $$ a = \sqrt{1 - p^2} $$
僕「じゃあ今度は内接正 $2n$ 角形を考えてみよう」
ユーリ「さっきもそーだったじゃん」
僕「違う違う。内接正 $n$ 角形から内接正 $2n$ 角形へ進むんだよ。 $n$ と $2n$ はちがうよね」
ユーリ「あ」
僕「こういう図を描いて名前を付ける」
ユーリ「ぐえー。ぐちゃぐちゃしてる」
僕「してないしてない。線分 $AP'$ を引いて、 $O$ から垂線を降ろしただけだよ」
ユーリ「降ろしただけって……あ、これのことか」
僕「そうそう」
ユーリ「ねーお兄ちゃん。なんで $AP'$ を考えるんだっけ?」
僕「え? $AP'$ が内接正 $2n$ 角形の一辺になるからだよ?」
ユーリ「えーと……」
僕「《内接正 $\underline{n}$ 角形》と《内接正 $\underline{2n}$ 角形》の辺がどこにあたるか、 まだ見えてないのかな? ちょっとこれを見て」
ユーリ「じー」
僕「ここで《オレンジ》は内接正 $n$ 角形の一辺で、 《グリーン》は内接正 $2n$ 角形の一辺だ。位置関係、わかった?」
ユーリ「あ、わかったわかった。そんで、 $q$ ってゆーのが $OQ$ の長さなんだね」
僕「そうそう」
ユーリ「いまから何をするんだっけ」
僕「うん、いまからやりたいのは、この《オレンジ》から《グリーン》を作ること。具体的には $p$ を使って $q$ を表したい」
ユーリ「また数式?」
僕「もちろん。つまり、$q = \REMTEXT{《$p$を使った式》}$というのを作りたいんだ」
ユーリ「どうやって?」
僕「わからない」
ユーリ「へ?」
僕「ユーリ、ちょっと時間ほしいな。考えてみるから」
僕は、しばらく図形をいじり回す。
僕「うーん……」
ユーリ「そんな難しーの?」
僕「いや、三角関数でチカラワザを使うとできるだろうけど、それじゃつまらない」
ユーリ「解ければ、いーじゃん!」
僕「だって、アルキメデスは三角関数を使わないで解いていたはずだよ」
ユーリ「お兄ちゃん、アルキメデスと張り合うの?」
僕「くやしいな……あ、こうしたらどうかな? 垂線をおろす」
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この記事は『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』として書籍化されています。
書籍化にあたっては、加筆修正をたくさん行い、 練習問題や研究問題も追加しました。
どの巻からでも読み始められますので、 ぜひどうぞ!