登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。 好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。言葉が大好き。
ミルカさん:数学が好きな高校生。 僕のクラスメート。メタルフレームの眼鏡に長い黒髪の《饒舌才媛》。
ここは高校の図書室。いまは放課後。
テトラちゃんと僕は、 ミルカさんのヒントを受けてオイラーの規準の証明に挑戦していた。
オイラーの規準
$p$ を奇素数とする。
$n$ を $p$ と互いに素な整数とする。このとき、 $$ \LegSym{n}{p} \equiv n^{\frac{p-1}{2}} \pmod p $$ が成り立つ。
ただし、 $\tLegSym{n}{p}$ はルジャンドル記号とする(第477回参照)。
オイラーの規準の証明、その前半はすでに証明できた。 $n$が$\TextYES$ならば $$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv \LegYES\pmod p $$ が証明できたのだ(第477回参照)。
後半は、$n$が$\TextNO$ならば $$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv \LegNO\pmod p $$ であることの証明だ。 僕たちは、証明完了の直前まではたどりついた(第477回参照)。
でも……
オイラーの規準の証明(後半)($\TextNO$ならば$\LegNO$と合同)
$p$ を奇素数とする。
$n$ を $p$ と互いに素な整数とする。
$m = 1,2,3,\ldots,p-1$ に対して、 $$ n \equiv mm^* \pmod p $$ となる $m^* = 1,2,3,\ldots,p - 1$ が $m$ ごとに唯一存在し、 さらに、 $(m^*)^* = m$ となる。
$n$が$p$を法として$\TextNO$のとき、 どの $m$ に対しても、 $m \NEQ m^*$ となる。
したがって、 $1,2,3,\ldots,p-1$ は、 $m$ と $m^*$ からなる $\frac{p-1}{2}$ 組のペアに分けられることになる。 各ペアの積は $n$ に合同であり、 そのペアが $\frac{p-1}{2}$ 組あるのだから、
$$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv (p-1)! \pmod p $$ となる。
ここで……あれ?
僕「あれ? ちょっと待って。 $\LegNO$ にならないぞ? 僕たちは、 $$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv (p-1)! \pmod p $$ にたどり着いた。 でも、僕たちのゴールは、 $$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv \LegNO \pmod p $$ だよね?」
テトラ「そうですよね」
ミルカ「あと一歩だ。ここでウィルソンの定理を使えば済む。 つまり」
テトラ「ちょ、ちょっと待ってください!」
テトラちゃんがミルカさんを止める。
ミルカ「うん?」
テトラ「証明のゴールまであと一歩。 ということは、いまミルカさんがおっしゃろうとしているのは、 こういうことでしょうか。 $$ (p-1)! \equiv \LegNO \pmod p $$ が成り立つ?」
ミルカ「テトラ、その通りだ。 その命題はウィルソンの定理と呼ばれている。 MacTutorによれば、 証明をしたのはラグランジュ とのことだ。 これでオイラーの規準の証明が終わった」
オイラーの規準の証明(後半)($\TextNO$ならば$\LegNO$と合同)
$p$ を奇素数とする。
$n$ を $p$ と互いに素な整数とする。
$m = 1,2,3,\ldots,p-1$ に対して、 $$ n \equiv mm^* \pmod p $$ となる $m^* = 1,2,3,\ldots,p - 1$ が $m$ ごとに唯一存在し、 さらに、 $(m^*)^* = m$ となる。
$n$が$p$を法として$\TextNO$のとき、 どの $m$ に対しても、 $m \NEQ m^*$ となる。
したがって、 $1,2,3,\ldots,p-1$ は、 $m$ と $m^*$ からなる $\frac{p-1}{2}$ 組のペアに分けられることになる。 各ペアの積は $n$ に合同であり、 そのペアが $\frac{p-1}{2}$ 組あるのだから、
$$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv (p-1)! \pmod p $$ となる。
ここでウィルソンの定理より、 $(p-1)!\equiv-1\pmod p$ なので、 $$ n^{\frac{p-1}{2}} \equiv \LegNO \pmod p $$ が成り立つ。
(証明終わり)
僕「うーん……最後の一歩で、 定理がどこからか降ってきて解決というのは、 ちょっと……何て言ったらいいか……」
テトラ「ストレスフル?」
ミルカ「欲求不満?」
僕「まあ、そんなところ」
ミルカ「だったら、ウィルソンの定理を証明すればいい」
テトラ「証明?」
ミルカ「あらためてウィルソンの定理を述べるとこうなる」
ウィルソンの定理
$p$ が素数のとき、 $$ (p-1)! \equiv -1 \pmod p $$ が成り立つ。
僕「主張自体はシンプルで綺麗だね。証明か……」
テトラ「あ、あの……もしかして、 あたしにもこのウィルソンの定理は証明できますか?」
ミルカ「いまのテトラなら、証明できてもおかしくはない」
テトラ「わかりました。 では、いつも通りに《具体例で確かめる》ところから始めます! まず、 $p = 2$ のときですね。 $p = 2$ なら $$ (p - 1)! = (2 - 1)! = 1! = 1 $$ です。 $2$ を法として、 $1$ と $-1$ は……ええと……はい、合同です。 なので、確かに $p = 2$ のとき、 $$ (p-1)! \equiv -1 \pmod p $$ は成り立ちます」
ミルカ「テトラは、 $1\equiv -1 \pmod 2$ はなぜ成り立つかを一言でいう」
テトラ「はい。 $a \equiv b \pmod m$ というのは、 $a - b \equiv 0 \pmod m$ ということで、 つまり $a - b$ が $m$ の倍数ということです。 ここで $1 - (-1) = 2$ で、もちろん $2$ は $2$ の倍数です。 ですから、 $$ 1 \equiv -1 \pmod 2 $$ です。はい、あたし、だいぶ合同の計算に慣れてきたみたいです!」
テトラちゃんは、 みるみるうちに $p = 3,5,7$ についてウィルソンの定理を確かめていった。
$p = 3$ のとき、ウィルソンの定理を確かめる
まず、 $p = 3$ のとき、 $$ (p - 1)! = (3 - 1)! = 2! = 2 $$ です。 $2 - (-1) = 3$ で、もちろん $3$ は $3$ の倍数ですから、 $2 \equiv -1 \pmod 3$ となり、 $$ (3 - 1)! \equiv -1 \pmod 3 $$ です。 つまり、 $p = 3$ のとき $$ (p - 1)! \equiv -1 \pmod p $$ は成り立ちます。
$p = 5$ のとき、ウィルソンの定理を確かめる
$p = 5$ のとき、 $$ (p - 1)! = (5 - 1)! = 4! = 1\times2\times3\times4 = 24 $$ です。 $24 - (-1) = 25$ で、 $5$ の倍数ですから、 $24 \equiv -1 \pmod 5$ となります。 つまり、 $p = 5$ のとき $$ (p - 1)! \equiv -1 \pmod p $$ は成り立ちます。
$p = 7$ のとき、ウィルソンの定理を確かめる
$p = 7$ のとき、 $$ (p - 1)! = (7 - 1)! = 6! = 1\times2\times3\times4\times5\times6 = 720 $$ です。 $720 - (-1) = 721 = 7\times103$ で、 $7$ の倍数ですから、 $720 \equiv -1 \pmod 7$ となります。 つまり、 $p = 7$ のとき $$ (p - 1)! \equiv -1 \pmod p $$ は成り立ちます。
僕「いま、テトラちゃんの計算を見ていて気づいたんだけど、 $$ p - 1\equiv -1\pmod p $$ はいつも成り立つよね。 だって、 $$ (p-1) - (-1) = p $$ だから、 $(p-1) - (-1)$ は $p$ の倍数だ」
テトラ「そうですね。《$p$ を法とする世界》で、 $p$ は $0$ に合同ですし、 $p-1$ は $-1$ に合同です」
僕「ということは、ウィルソンの定理を証明する代わりに、 $$ (p-1)! \equiv p-1 \pmod p $$ を証明してもいいわけだね」
テトラ「それはそうですが……あまり違いがないような」
僕「そんなことないよ。だって $p-1$ は $p$ と互いに素だから、 $p-1$ で割って、 $$ (p-2)! \equiv 1 \pmod p $$ を証明すればいいことになる。もっといえば、 $$ 2\times3\times\cdots\times(p-3)\times(p-2) \equiv 1 \pmod p $$ を証明すればいい」
テトラ「それで話は簡単になっているんでしょうか」
僕「なっているよ。うん、これで証明までいけそうだ」
テトラ「ええ……?」
問題(ウィルソンの定理の証明)
$p$ が素数のとき、 $$ (p-1)! \equiv -1 \pmod p $$ が成り立つことを証明せよ。
ミルカ「ヒントがだいぶ多いな」

僕「うん、僕はわかったと思う。証明を書き下ろせる準備までできた」
テトラ「あたしは……わかりません。 $p-1$ が $-1$ に合同であるということも、 $(p-2)!$ が $1$ に合同であることを示せばいいこともわかります。 でも、そういうヒントをいただいても、 ウィルソンの定理を証明するとなると……さっぱりです」
僕「オイラーの規準を証明するとき、 ミルカさんからもらったヒントがあった。 それも重要だね」
テトラ「ミルカさんからいただいたヒントというのは、 $$ n \equiv mm^* \pmod p $$ を満たす $m$ と $m^*$ というペアの存在を意識することでした(第477回参照)」
ミルカ「対合」
テトラ「ついごう?」
ミルカ「対合というときもある。 $f\circ f$ が恒等写像になる全単射 $f$ を一般に対合という」
僕「あ、名前があるんだ」
テトラ「す、すみません。具体的には?」
ミルカ「$P = \SET{1,2,\ldots,p-1}$ とおく。 $n$ を $P$ の要素として、 $$ n\equiv mm^*\pmod p $$ となるペア $m$ と $m^*$ を考える」
テトラ「はい、それはわかります」
ミルカ「そのときの ${}^*$ を《$m$ から $m^*$ を得る写像》と考えると、 写像 ${}^*$ は対合になる。なぜなら写像 ${}^*$ は $P$ から $P$ への全単射で、 しかも ${}^*{}^*$ は恒等写像になるからだ」
僕「二回繰り返すと元に戻るということだね。 $(m^*)^* = m$ だから」
そこでテトラちゃんは両手を頭に乗せて困った顔になる。
コダックの真似をしているわけではない。
テトラ「あたしは、まだ話が飲み込めていないようです。 対合のお話も理解しているんですが、ウィルソンの定理にどうつながるか、 まださっぱりわかりません」
僕「僕が考えたこと、話してもいい?」
テトラ「はい……」
僕「僕は $mm^* \equiv n \pmod p$ の特別な場合として、 $mm^* \equiv 1 \pmod p$ を考えた。 このときは、 $m^*$ のことを $m^{-1}$ と書いた方がピンとくるね」
テトラ「あ、はい。 それについては表も作りましたよね。 《$p$ を法とする世界の逆数》です。 この表で縦の列に並んだ二つの数を掛け合わせれば $1$ に合同になります(第477回参照)」
$m$ と $m^{-1}$ の表
$$ \begin{array}{|c|cccccc|} \hline m & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\ \hline m^{-1} & 1 & 4 & 5 & 2 & 3 & 6 \\ \hline \end{array} $$ $$ mm^{-1} \equiv 1 \pmod p $$
僕「そこでね、 $$ 1,2,3,4,5,6 $$ と数を並べて、自分の逆数となるパートナーと手を結ぶ。 すると、こうなるよね」
$m = 1,2,3,4,5,6$ で $m$ と $m^{-1}$ とを結ぶ

テトラ「はい、わかります。 $1$ は自分自身と、 $2$ は $4$ と、 $3$ は $5$ と、 $6$ は自分自身と手を結びます。 手を結んだパートナーと掛け合わせれば $1$ と合同になります……えっ? あっ、あっ、あっ!」
僕「もうわかったよね」
ミルカ「テトラのアハ体験だな」
テトラ「わかりました! $1,2,3,4,5,6$ を掛け合わせるときに、 ペアをまとめるんですね。 $$ 1\times2\times3\times4\times5\times6 = 1 \times \underbrace{2\times4}_{\text{ペア}} \times \underbrace{3\times5}_{\text{ペア}} \times 6 $$ となって、ペアの積は $1$ と合同ですから、 $$ 1\times2\times3\times4\times5\times6 \equiv 6 \pmod 7 $$ になります。 $6 \equiv -1 \pmod 7$ ですから、結局 $$ 1\times2\times3\times4\times5\times6 \equiv -1 \pmod 7 $$ です。これは $p = 7$ のとき $$ (p-1)! \equiv -1 \pmod 7 $$ になってますね!」
ミルカ「それでいい」
僕「これでウィルソンの定理が証明できる! すっきりだ!」
解答(ウィルソンの定理の証明)
$p$ を素数とする。
$p = 2$ の場合は、 $(2-1)!\equiv -1\pmod 2$ より確かに成り立つ。
$p = 3$ の場合は、 $(3-1)!\equiv -1\pmod 3$ より確かに成り立つ。
以下では $p > 3$ とする。
$p$ が素数であることから、 $m = 1,2,3,\ldots,p-1$ に対して、 $$ mm^{-1}\equiv 1 \pmod p $$ となる $m^{-1} = 1,2,3,\ldots,p - 1$ が $m$ ごとに唯一存在し、 $(m^{-1})^{-1} = m$ となる。
また、 $m = m^{-1}$ になるのは $m^2\equiv1\pmod p$ のときで、 $m^2 - 1 = (m-1)(m+1)$ が $p$ の倍数になるのは、 $p$ が素数であることにより、 $m = 1$ および $m = p-1$ の場合だけである。
したがって、 $2,3,\ldots,p-2$ は、 積が $1$ に合同になる $\frac{p-1}{2}-1$ 組のペアに分けられる。 よって、 $$ 1\times\underbrace{2\times3\times\cdots\times(p-2)}_{\text{$1$に合同}}\times(p-1) \equiv p-1 \pmod p $$ となる。 $p-1\equiv -1\pmod p$ より、 $$ (p-1)!\equiv -1\pmod p $$ が成り立つ。
(証明終わり)
テトラ「証明、できましたね……」
僕「できたね!」
テトラ「《$p$ を法とする世界》には不思議なおもしろさがありますね。 $p-1$ が $-1$ に見立てられるところもおもしろいですし……」
そこで、 ミルカさんが急に席を立ち、声を上げた。
ミルカ「ではここで、さらにおもしろい命題を考えよう」
テトラ「何ですか?」
ミルカ「数論におけるガウスの補題と呼ばれているものだ」
僕「ガウスの補題……」
ガウスの補題
$p$ を奇素数とする。
$n$ を $p$ と互いに素な整数とする。
$x$ を $p$ で割った余りを $\BAR{x}$ で表す。 そして、 $\frac{p-1}{2}$ 個の正整数 $$ \BAR{1n}\CommaQuad \BAR{2n}\CommaQuad \BAR{3n}\CommaQuad \ldots\CommaQuad \BAR{\tfrac{p-1}{2}n} $$ のうち 《$\frac{p-1}{2}$より$\MARKC{\text{大きいもの}}$の個数》 を $\ell$ とする。 すると、 $$ \LegSym{n}{p} = (-1)^{\ell} $$ が成り立つ。
ただし、 $\tLegSym{n}{p}$ はルジャンドル記号である。
テトラ「ええと……?」
僕「これは……?」
テトラちゃんと僕は、 このガウスの補題の意味を取るのに、 しばらく時間が掛かった。
述べている一つ一つのことは、それほど難しくない。
テトラ「$\ell$ が難しいですね。セオリー通り、小さな数で試します! たとえば $p = 7$ と $n = 2$ として考えます」
テトラちゃんは、基本にどこまでも忠実なのだ。
僕「さすがだ……」
テトラ「$p = 7$ で $n = 2$ のときを考えます。 もう何度も考えてきましたが、$7$を法として$2$は$\TextYES$です。 なぜなら、 $4^2 \equiv 2 \pmod 7$ のように平方して $2$ と合同になる整数 $4$ が存在するからです。 ということは、ルジャンドル記号を使って、 $$ \LegSym{n}{p} = \LegSym{2}{7} = \LegYES $$ となります」
僕「うん。それはいい。問題は $\ell$ だね」
テトラ「ですよね。ガウスの補題にしたがって考えますと、 $$ \BAR{1n}\CommaQuad \BAR{2n}\CommaQuad \BAR{3n}\CommaQuad \ldots\CommaQuad \BAR{\tfrac{p-1}{2}n} $$ を考えるというのですから、 $p = 7$ で $n = 2$ の場合ですと、この $3$ 個です。 $$ \BAR{1\times2}\CommaQuad \BAR{2\times2}\CommaQuad \BAR{3\times2} $$ 具体的に計算して $p = 7$ で割った余りに直しますと、 $\frac{p-1}{2} = 3$ よりも大きいものは $\MARKC4$ と $\MARKC6$ の $2$ 個です。 $$ \BAR{1\times2} = 2 \LEQ 3\CommaQuad \BAR{2\times2} = \MARKC4 > 3\CommaQuad \BAR{3\times2} = \MARKC6 > 3 $$ つまり、 $\ell = 2$ ということになります。 ガウスの補題では $(-1)^{\ell}$ を計算しますので、 $$ (-1)^{\ell} = (-1)^2 = \LegYES $$ となりますっ! た、確かに $$ \LegSym{n}{p} = (-1)^{\ell} $$ が成り立っていますね……これは、いったい何なんでしょうっ!」
ミルカ「ガウスの補題だ。$\TextNO$の場合も確かめよう」
僕「僕がやってみるよ。まだ僕は $\ell$ をどうとらえていいかわからない。 $\TextNO$の場合だから、$p = 7$で$n = 3$で考える。 $7$を法として$3$は$\TextNO$だから、 $$ \LegSym{n}{p} = \LegSym{3}{7} = \LegNO $$ になる。これはもうわかっている。 $\LegNO$ になるには $\ell$ が奇数にならなくちゃいけない。 $p = 7$ で $n = 3$ だから、 $$ \BAR{1n}\CommaQuad \BAR{2n}\CommaQuad \BAR{3n}\CommaQuad \ldots\CommaQuad \BAR{\tfrac{p-1}{2}n} $$ を考えると、 $$ \BAR{1\times3}\CommaQuad \BAR{2\times3}\CommaQuad \BAR{3\times3} $$ になる。 $\frac{p-1}{2} = 3$ よりも大きいものは…… $$ \BAR{1\times3} = 3 \LEQ 3\CommaQuad \BAR{2\times3} = \MARKC6 > 3\CommaQuad \BAR{3\times3} = 2 \LEQ 3 $$ ……だから、 $\MARKC6$ の $1$ 個だけで、 $\ell = 1$ だ。 $$ (-1)^{\ell} = (-1)^1 = \LegNO $$ すごいなあ、確かに、 $$ \LegSym{n}{p} = (-1)^{\ell} $$ となる。どうしてこんなことがいえるんだろう」
テトラ「先輩、先輩、先輩! もっと確かめましょうよ!」
ミルカ「表にしたくなるな」
僕「確かに!」
僕たちは夢中になって $p = 7$ でガウスの補題を確かめた。 $n = 1,2,3,4,5,6$ で考えるのだ。
$p = 7$ でガウスの補題を考える
$$ \begin{array}{|c|ccc|c|c|c|} \hline n & \BAR{1n} & \BAR{2n} & \BAR{3n} & \ell & (-1)^\ell & \tLegSym{n}{p} \\ \hline 1 & 1 & 2 & 3 & 0 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 2 & 2 & \MARKC4 & \MARKC6 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 3 & 3 & \MARKC6 & 2 & 1 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 4 & \MARKC4 & 1 & \MARKC5 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 5 & \MARKC5 & 3 & 1 & 1 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 6 & \MARKC6 & \MARKC5 & \MARKC4 & 3 & \LegNO & \LegNO \\ \hline \end{array} $$
$\MARKC{\text{緑色の数}}$は$\frac{p-1}{2} = 3$より大きい数を表す。
$\MARKC{\text{緑色の数}}$の個数が$\ell$である。
テトラ「すごいですね……本当にぴったりと $$ \LegSym{n}{p} = (-1)^{\ell} $$ が成り立っています!」
僕「いやあ、不思議だよ。特に僕がわからないのは $\ell$ の意味だなあ。 $k = 1,2,3$ について $\BAR{kn}$ を計算して、それが $4,5,6$ になる個数を $\ell$ とする。 いったい、 $$ \BAR{kn} > \frac{p-1}{2} $$ を満たす $k$ の個数 $\ell$ に、 どんな意味があるっていうんだろう?」
ミルカ「《週の前半》と《週の後半》を考える(第476回参照)」
僕「え?」
テトラ「はい?」
僕とテトラちゃんは、さっと彼女を見る。
ミルカさんは、自分の手を見つめている。
僕「……?」
テトラ「……?」
ミルカさんは、両手の指を合わせて胸の前に小さな《鳥かご》を作っていた。
親指は親指に、 人差し指は人差し指に、 ……そして、小指は小指に合わせ、 ふくらませた形だ。
僕は、これを知ってる。 全単射の鳥かごだ(『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』参照)。
ミルカ「$p = 11$ の表も作ろう。 そうすれば《右手の指》と《左手の指》が考えられる」
テトラ「?」
僕「?」
テトラちゃんと僕は、 大きな疑問符を心に抱きながら、 $p = 11$ についてガウスの補題の表を作っていった。
$p = 11$ でガウスの補題を考える
$$ \begin{array}{|c|ccccc|c|c|c|} \hline n & \BAR{1n} & \BAR{2n} & \BAR{3n} & \BAR{4n} & \BAR{5n} & \ell & (-1)^\ell & \tLegSym{n}{p} \\ \hline 1 & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 0 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 2 & 2 & 4 & \MARKC6 & \MARKC8 & \MARKC{10} & 3 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 3 & 3 & \MARKC6 & \MARKC9 & 1 & 4 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 4 & 4 & \MARKC8 & 1 & 5 & \MARKC9 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 5 & 5 & \MARKC{10} & 4 & \MARKC9 & 3 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 6 & \MARKC6 & 1 & \MARKC7 & 2 & \MARKC8 & 3 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 7 & \MARKC7 & 3 & \MARKC{10} & \MARKC6 & 2 & 3 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 8 & \MARKC8 & 5 & 2 & \MARKC{10} & \MARKC7 & 3 & \LegNO & \LegNO \\ \hline 9 & \MARKC9 & \MARKC7 & 5 & 3 & 1 & 2 & \LegYES & \LegYES \\ \hline 10 & \MARKC{10} & \MARKC9 & \MARKC8 & \MARKC7 & \MARKC6 & 5 & \LegNO & \LegNO \\ \hline \end{array} $$
$\MARKC{\text{緑色の数}}$は$\frac{p-1}{2} = 5$より大きい数を表す。
$\MARKC{\text{緑色の数}}$の個数が$\ell$である。
テトラ「先輩! あたし、この表で気づいたことがあります!」
僕「うん、僕もだ!」
参考文献
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(2026年8月14日)