[logo] Web連載「数学ガールの秘密ノート」
Share

第468回 シーズン47 エピソード8
関係と関係の関係(後編)

$ \definecolor{CUD-GREEN}{rgb}{0.012,0.686,0.478}% 3,175,122 \newcommand{\MARK}[1]{\textcolor{red}{#1}} \newcommand{\MARKA}[1]{\textcolor{red}{#1}} \newcommand{\MARKB}[1]{\textcolor{blue}{#1}} \newcommand{\MARKC}[1]{\textcolor{CUD-GREEN}{#1}} \newcommand{\REMTEXT}[1]{\textbf{#1}} \newcommand{\SET}[1]{\{\,#1\,\}} \newcommand{\SETM}{\;|\;} \newcommand{\BOTHIMPLIES}{\Leftrightarrow} \newcommand{\LONGBOTHIMPLIES}{\quad\Longleftrightarrow\quad} \newcommand{\REAL}{\mathbb R} \newcommand{\VAREMPTYSET}{\varnothing} $

Web連載読み放題プランのおすすめ

Web連載読み放題にご参加の方は、公開済みの記事はすべて読み放題です!

Web連載読み放題について詳しく

登場人物紹介

:数学が好きな高校生。

テトラちゃんの後輩。 好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。言葉が大好き。

《関係》と《関係》の《関係》を探ろう!

テトラちゃんは、 《関係》を《集合》で表すことについておしゃべりを続けている。

集合の包含関係が半順序という《関係》になるというところから、 テトラちゃんは何かを思いついたようだ(第467回参照)。

「どうしたの、テトラちゃん?」

テトラ「《集合》をいくつか考えるとき、 その包含関係は半順序になりますよね?」

「そうだね。さっき確かめた通り、 全順序とは限らないけれど、半順序にはなる(第467回参照)」

テトラ「半順序というのは《関係》です」

「そうだけど……?」

テトラ「あたしたちはいま、 いろんな《関係》を《集合》で表すことを検討しています」

「うん」

テトラ「ということはですよ。 あたしたちは、《関係》と《関係》の《関係》を考えられることになりますっ!」

「うん? ……おおお! 確かにそうだね! すごいなテトラちゃん!」

テトラ「ですよね?」

「確かにできる! こういうことだね。

  • $a$ という《関係》を、 $A$ という《集合》で表す。
  • $b$ という《関係》を、 $B$ という《集合》で表す。
  • そして、 $A$ と $B$ という二つの《集合》の包含関係を調べる。つまり、 $A\subset B$ なのか、 $B\subset A$ なのか、どちらでもないのかを調べる。

そうすれば、

  • $a$ と $b$ という二つの《関係》のあいだの《関係》を考えることができる!
すごいな、テトラちゃん!」

テトラ「そして、そして、そして……《集合》の包含関係で調べるなら、 《関係》と《関係》は半順序という《関係》になるはずです!」

「確かに、そうなる。 ということは、ハッセ図が描けるわけだね。 そりゃ、おもしろそうだ!」

テトラ「先輩、具体的にやりましょう!」

「うん、やろうやろう!」

テトラ「さっき《じゃんけん》で使った $0,1,2$ をそのまま使いましょうよ。 そうすれば $3\times3$ の表を作って具体的に考えることができます。 《じゃんけん》や、数の大小を表す《 $<$ 》や《 $\leqq$ 》の関係を考えられます」

「うん、それからもちろん《 $=$ 》もでてくるね」

テトラ「ですです」

「僕たちがやろうとしているのは、こういうこと」

《関係》と《関係》の《関係》を探る

$S = \SET{0,1,2}$ とする。

$S$ 上の《関係》を見つける。

その《関係》を《集合》として表す。

たとえば、《等しい($=$)》という《関係》は、 $$ \SET{(0,0),(1,1),(2,2)} $$ という《集合》で表せる。

《関係》を表す《集合》をいろいろ作っていき、 互いの包含関係を調べる。

そうすれば、 《関係》と《関係》の《関係》を探れる!

テトラ「やってみましょうっ!」

こんなふうにして、テトラちゃんは、 《関係》と《関係》の《関係》 を探り始めた。

《等しい($=$)》という関係 $R_=$

「じゃあ、まずこれまで出てきた《関係》をリストアップして整理しようか」

テトラ「はい、そうですね。 まず《等しい($=$)》という《関係》がありました」

《等しい($=$)》という関係を表す表

「そうだね」

テトラ「これを $S \times S$ の部分集合で表すと $$ R_= = \SET{(0,0),(1,1),(2,2)} $$ となります」

「$R_=$ は、 $$ R_= = \SET{(x,x)\SETM x \in S} $$ とも書けるね」

テトラ「なるほど。 $x = 0,1,2$ で $(x,x)$ を全部集めたわけですか」

「そうそう」

《より小さい($<$)》という関係 $R_<$

テトラ「それから《より小さい($<$)》という《関係》もあります」

《より小さい($<$)》という関係を表す表

「これは $$ \begin{xalignat*}{1} R_< &= \SET{(0,1),(0,2),(1,2)} \\ &= \SET{(x,y)\SETM x < y, x \in S, y \in S} \end{xalignat*} $$ ということになるね」

テトラ「はい。あっ、ということは $R_=$ はこう書けますね?」

$$ R_= = \SET{(x,y)\SETM x = y, x \in S, y \in S} $$

「そうなるね」

《以下($\leqq$)》という関係 $R_\leqq$

テトラ「《以下($\leqq$)》という《関係》はこうなります」

《以下($\leqq$)》という関係を表す表

「うん。これは……」

テトラ「す、すみません。あたしに書かせてください」

$$ \begin{xalignat*}{1} R_\leqq &= \SET{(0,0),(0,1),(0,2),(1,1),(1,2),(2,2)} \\ &= \SET{(x,y)\SETM x \leqq y, x \in S, y \in S} \end{xalignat*} $$

「なるほど。さっそく自分で書いてみたんだ」

テトラ「はいっ! はいはいはいっ!」

急にテトラちゃんが元気に右手を高く挙げた。

「え?」

テトラ「あたし……あの、当たり前のことを言ってもいいですか?」

「もちろん、どうぞ」

テトラ「結びつけているものを見つけた感じが……しました」

「結びつけているもの?」

テトラ「はい。 先輩は先ほど、 $$ x \leqq y \LONGBOTHIMPLIES (x,y) \in R_{\leqq} $$ という説明をしてくださいました(第466回参照)」

「そうだね。 $x \leqq y$ と $(x,y) \in R_\leqq$ が同値になるような集合 $R_\leqq$ を持ってくることができれば、 $x\leqq y$ という《関係》を $R_\leqq$ という《集合》で表せたといえる」

テトラ「そこで《集合》の $\SET{(x,y)\SETM\quad\cdots\quad}$ という書き方が効いてくるんだと思いました」

「おお?」

テトラ「つまりですね、

  • $\MARKA{x \leqq y}$ という式が成り立つかどうか
  • $(x,y)$ が $\MARKB{R_\leqq}$ に属しているかどうか
という二つを結びつけている。 それが、 $$ \MARKB{R_\leqq} = \SET{(x,y)\SETM \MARKA{x \leqq y}, x \in S, y \in S} $$ という書き方なんですね! ええと、改めてそう言ってみると、 すごく当たり前のことですよね……大げさに挙手したりして、すみません」

「いや、当たり前だけど、当たり前じゃないよ。 いまテトラちゃんは《そういうことだったんだ!》と納得したんだよね。 いま言ったことは、わかっている人には当たり前かもしれないけど、 テトラちゃんが自分で納得することには大きな価値があるはず!」

テトラ「で、ですよね!」

「当たり前のことでも、自分の理解をちゃんと言語化するテトラちゃんは偉いなあ!」

テトラ「あの……テトラはもう一つ、当たり前のことを発見しました。 ……当たり前を発見、って変ですけど…… $R_<$ は $R_{\leqq}$ の部分集合になってますよね。 なぜなら、 集合 $R_<$ の要素になっている $\MARKA{(0,1)}$ と、 $\MARKB{(0,2)}$ と、 $\MARKC{(1,2)}$ は、 すべて集合 $R_\leqq$ の要素でもあるからです! $$ R_< = \SET{\MARKA{(0,1)},\MARKB{(0,2)},\MARKC{(1,2)}} \subset \SET{(0,0),\MARKA{(0,1)},\MARKB{(0,2)},(1,1),\MARKC{(1,2)},(2,2)} = R_{\leqq} $$ ですから、 $$ R_< \subset R_{\leqq} $$ が成り立ちます。 もちろん、 $$ \SET{(x,y)\SETM x < y, x \in S, y \in S} \subset \SET{(x,y)\SETM x \leqq y, x \in S, y \in S} $$ も成り立ちます。 あたしの理解、これで正しいですよね?」

「うん、もちろん!」

テトラ「具体例を考えるとスッキリします。 自分がおかしなことをやっていないとわかるからです。 やっぱり……」

「やっぱり……」

テトラ《例示は理解の試金石》ですねっ!」

《例示は理解の試金石》だよね!」

僕たちは、声をハモらせて宣言した。

《じゃんけんで勝つ関係》

テトラ「《じゃんけんで勝つ》という《関係》はこうなります」

《じゃんけんで勝つ》という関係を表す表

(行の手に対して列の手が勝ったときに○、負けるかあいこのときに×)

「$0,1,2$ はそれぞれパー、チョキ、グーと見なす」

テトラ「はい。それでこの《関係》を表す《集合》を $J$ とすると、 $$ J = \SET{(0,1),(1,2),(2,0)} $$ になります。この $J$ と、 $R_=, R_<, R_\leqq$ との間には包含関係はなさそう……はい、 ありません」

「ここまでで《関係》を表す四つの《集合》が出てきたね。 $R_=, R_<, R_\leqq$ そして $J$ だ」

テトラ「《関係》としては見つけられなくても、 《集合》としてはもっと見つけることができそうです」

「えっと、それは……?」

無料で「試し読み」できるのはここまでです。 この続きをお読みになるには「読み放題プラン」へのご参加が必要です。

ひと月500円で「読み放題プラン」へご参加いただきますと、 460本以上の記事がすべて読み放題になりますので、 ぜひ、ご参加ください。


参加済みの方/すぐに参加したい方はこちら

結城浩のメンバーシップで参加 結城浩のpixivFANBOXで参加

(2026年4月10日)

[icon]

結城浩(ゆうき・ひろし) @hyuki


『数学ガール』作者。 結城メルマガWeb連載を毎週書いてます。 文章書きとプログラミングが好きなクリスチャン。2014年日本数学会出版賞受賞。

Twitter note 結城メルマガ Mastodon Bluesky Threads Home