登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。 好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。言葉が大好き。
僕とテトラちゃんは、 《関係》を《集合》で表すことについておしゃべりを続けている。
集合の包含関係が半順序という《関係》になるというところから、 テトラちゃんは何かを思いついたようだ(第467回参照)。
僕「どうしたの、テトラちゃん?」
テトラ「《集合》をいくつか考えるとき、 その包含関係は半順序になりますよね?」
僕「そうだね。さっき確かめた通り、 全順序とは限らないけれど、半順序にはなる(第467回参照)」
テトラ「半順序というのは《関係》です」
僕「そうだけど……?」
テトラ「あたしたちはいま、 いろんな《関係》を《集合》で表すことを検討しています」
僕「うん」
テトラ「ということはですよ。 あたしたちは、《関係》と《関係》の《関係》を考えられることになりますっ!」
僕「うん? ……おおお! 確かにそうだね! すごいなテトラちゃん!」
テトラ「ですよね?」
僕「確かにできる! こういうことだね。
そうすれば、
テトラ「そして、そして、そして……《集合》の包含関係で調べるなら、 《関係》と《関係》は半順序という《関係》になるはずです!」
僕「確かに、そうなる。 ということは、ハッセ図が描けるわけだね。 そりゃ、おもしろそうだ!」
テトラ「先輩、具体的にやりましょう!」
僕「うん、やろうやろう!」
テトラ「さっき《じゃんけん》で使った $0,1,2$ をそのまま使いましょうよ。 そうすれば $3\times3$ の表を作って具体的に考えることができます。 《じゃんけん》や、数の大小を表す《 $<$ 》や《 $\leqq$ 》の関係を考えられます」
僕「うん、それからもちろん《 $=$ 》もでてくるね」
テトラ「ですです」
僕「僕たちがやろうとしているのは、こういうこと」
《関係》と《関係》の《関係》を探る
$S = \SET{0,1,2}$ とする。
$S$ 上の《関係》を見つける。
その《関係》を《集合》として表す。
たとえば、《等しい($=$)》という《関係》は、 $$ \SET{(0,0),(1,1),(2,2)} $$ という《集合》で表せる。
《関係》を表す《集合》をいろいろ作っていき、 互いの包含関係を調べる。
そうすれば、 《関係》と《関係》の《関係》を探れる!
テトラ「やってみましょうっ!」
こんなふうにして、僕 とテトラちゃんは、 《関係》と《関係》の《関係》 を探り始めた。

僕「じゃあ、まずこれまで出てきた《関係》をリストアップして整理しようか」
テトラ「はい、そうですね。 まず《等しい($=$)》という《関係》がありました」
《等しい($=$)》という関係を表す表

僕「そうだね」
テトラ「これを $S \times S$ の部分集合で表すと $$ R_= = \SET{(0,0),(1,1),(2,2)} $$ となります」
僕「$R_=$ は、 $$ R_= = \SET{(x,x)\SETM x \in S} $$ とも書けるね」
テトラ「なるほど。 $x = 0,1,2$ で $(x,x)$ を全部集めたわけですか」
僕「そうそう」
テトラ「それから《より小さい($<$)》という《関係》もあります」
《より小さい($<$)》という関係を表す表

僕「これは $$ \begin{xalignat*}{1} R_< &= \SET{(0,1),(0,2),(1,2)} \\ &= \SET{(x,y)\SETM x < y, x \in S, y \in S} \end{xalignat*} $$ ということになるね」
テトラ「はい。あっ、ということは $R_=$ はこう書けますね?」
$$ R_= = \SET{(x,y)\SETM x = y, x \in S, y \in S} $$僕「そうなるね」
テトラ「《以下($\leqq$)》という《関係》はこうなります」
《以下($\leqq$)》という関係を表す表

僕「うん。これは……」
テトラ「す、すみません。あたしに書かせてください」
$$ \begin{xalignat*}{1} R_\leqq &= \SET{(0,0),(0,1),(0,2),(1,1),(1,2),(2,2)} \\ &= \SET{(x,y)\SETM x \leqq y, x \in S, y \in S} \end{xalignat*} $$僕「なるほど。さっそく自分で書いてみたんだ」
テトラ「はいっ! はいはいはいっ!」
急にテトラちゃんが元気に右手を高く挙げた。
僕「え?」
テトラ「あたし……あの、当たり前のことを言ってもいいですか?」
僕「もちろん、どうぞ」
テトラ「結びつけているものを見つけた感じが……しました」
僕「結びつけているもの?」
テトラ「はい。 先輩は先ほど、 $$ x \leqq y \LONGBOTHIMPLIES (x,y) \in R_{\leqq} $$ という説明をしてくださいました(第466回参照)」
僕「そうだね。 $x \leqq y$ と $(x,y) \in R_\leqq$ が同値になるような集合 $R_\leqq$ を持ってくることができれば、 $x\leqq y$ という《関係》を $R_\leqq$ という《集合》で表せたといえる」
テトラ「そこで《集合》の $\SET{(x,y)\SETM\quad\cdots\quad}$ という書き方が効いてくるんだと思いました」
僕「おお?」
テトラ「つまりですね、
僕「いや、当たり前だけど、当たり前じゃないよ。 いまテトラちゃんは《そういうことだったんだ!》と納得したんだよね。 いま言ったことは、わかっている人には当たり前かもしれないけど、 テトラちゃんが自分で納得することには大きな価値があるはず!」
テトラ「で、ですよね!」
僕「当たり前のことでも、自分の理解をちゃんと言語化するテトラちゃんは偉いなあ!」
テトラ「あの……テトラはもう一つ、当たり前のことを発見しました。 ……当たり前を発見、って変ですけど…… $R_<$ は $R_{\leqq}$ の部分集合になってますよね。 なぜなら、 集合 $R_<$ の要素になっている $\MARKA{(0,1)}$ と、 $\MARKB{(0,2)}$ と、 $\MARKC{(1,2)}$ は、 すべて集合 $R_\leqq$ の要素でもあるからです! $$ R_< = \SET{\MARKA{(0,1)},\MARKB{(0,2)},\MARKC{(1,2)}} \subset \SET{(0,0),\MARKA{(0,1)},\MARKB{(0,2)},(1,1),\MARKC{(1,2)},(2,2)} = R_{\leqq} $$ ですから、 $$ R_< \subset R_{\leqq} $$ が成り立ちます。 もちろん、 $$ \SET{(x,y)\SETM x < y, x \in S, y \in S} \subset \SET{(x,y)\SETM x \leqq y, x \in S, y \in S} $$ も成り立ちます。 あたしの理解、これで正しいですよね?」
僕「うん、もちろん!」
テトラ「具体例を考えるとスッキリします。 自分がおかしなことをやっていないとわかるからです。 やっぱり……」
僕「やっぱり……」
テトラ「《例示は理解の試金石》ですねっ!」
僕「《例示は理解の試金石》だよね!」
僕たちは、声をハモらせて宣言した。
テトラ「《じゃんけんで勝つ》という《関係》はこうなります」
《じゃんけんで勝つ》という関係を表す表
(行の手に対して列の手が勝ったときに○、負けるかあいこのときに×)

僕「$0,1,2$ はそれぞれパー、チョキ、グーと見なす」
テトラ「はい。それでこの《関係》を表す《集合》を $J$ とすると、 $$ J = \SET{(0,1),(1,2),(2,0)} $$ になります。この $J$ と、 $R_=, R_<, R_\leqq$ との間には包含関係はなさそう……はい、 ありません」
僕「ここまでで《関係》を表す四つの《集合》が出てきたね。 $R_=, R_<, R_\leqq$ そして $J$ だ」
テトラ「《関係》としては見つけられなくても、 《集合》としてはもっと見つけることができそうです」
僕「えっと、それは……?」
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