登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
ユーリ:僕のいとこの中学生。 僕のことを《お兄ちゃん》と呼ぶ。 論理的な話は好きだが飽きっぽい。
僕とユーリはサイコロの置き方についておしゃべりを続けている。
ユーリ「……おもしろーい! なにこの《うまくはまる》感じ! 《あたりまえ》っぽいのに《不思議》な感じ!」
僕「おもしろいよね。
ユーリ「同じものを……別の目で」
僕「そうだよ。僕たちはサイコロの置き方に
ユーリ「ふーん……そっか、たとえばこれもそーだね。
僕「ああ、そうだね。これは面の中心を通る回転軸での回転だね」
ユーリ「……」
僕「……」
ユーリはしばらく考えている。
ユーリ「ねーお兄ちゃん、気付いたことあるんだけど……」
僕「何?」
ユーリ「あのね……サイコロの面があって、その中心を通る回転軸だと、
僕「そうだね」
ユーリ「面の中心を通る回転軸だと、
正
僕「うん、確かにそういうことになる。正方形……正
ユーリ「面の中心で回転すると、
正
僕「なるほど」
ユーリ「あれ、何で感動しないの? 『ほんとにそうだね。ユーリは賢いなあ!』って言ってくんないの? これ、正
僕「いやいや、ユーリは賢いよ。確かにこれは正
ユーリ「違うの?」
僕「《正
ユーリ「うわなにその微妙な話!」
僕「それはそれとして、正
ユーリ「でね、でね、話はまだあるの。
面の中心で回すと
僕「そうだね。表と裏をひっくり返すように」
ユーリ「
僕「サイコロの辺が、正
正
ユーリ「これってすごくない?」
僕「すごいすごい。ユーリのその発想はすごいなあ。《
ユーリ「へへ」
僕「ユーリは回転で不変な形に注目していたことになるね」
ユーリ「ふへん」
僕「ほら、ミルカさんがよくいう《不変性》のことだよ。 何かを変化させたとき、もしも不変なものがあったらそれに注目する。 不変なものは大事なことを教えてくれることがある」
ユーリ「不変なもの……」
それからしばらく、僕とユーリはそれぞれに立方体の図を描いたり、無言で考えたりして過ごした。
やがて、ユーリがまた口を開く。
ユーリ「ねーお兄ちゃん。さっきの話でちょっと気付いたことがあるんだけど」
僕「さっきの話」
ユーリ「面の中心で回して
僕「つぶしてもいい?」
ユーリ「なんてゆーか……正
正
僕「ああ、そういうことか。そうだね。つぶしても
ユーリ「つぶすのを逆にして、引き延ばしてもいーよね」
正
僕「ははは!確かにね。
ユーリがいま言った《○○してもいーよね》というのは、
《○○したとしても、
ユーリ「さっきからそー言ってるじゃん」
僕「いや、言ってはいないよ……」
ユーリ「正
僕「うん。それは深い話だな。形の対称性の話だね(第232回参照)。 回転軸方向につぶしたり、引き延ばしたりしても、同じ仲間のまま。 もちろん、引き延ばしたら立方体じゃなくなるから、他の回転軸では回せなくなるけど」
ユーリ「それはわかってるの! うーん……あんまりおもしろい話じゃなかった?」
僕「いやいや、そんなことないよ。 ユーリはそんなふうにつぶしたり引き延ばしたりしてみたかったんだね」
ユーリ「そだよ。それでね。サイコロの形……正
僕「んんん? いま大事そうなこと言ったね。ユーリ、もう一度言って?」
ユーリ「回転軸が
僕「いや、ユーリの言いたいことがわかってきたよ。
正
ユーリ「うん!そーでしょ?」
僕「いや、そうじゃないよ」
ユーリ「?」
僕「直交する
ユーリ「ほんとに?」
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