登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
ユーリ:僕のいとこの中学生。 僕のことを《お兄ちゃん》と呼ぶ。 論理的な話は好きだが飽きっぽい。
リサ:自在にプログラミングを行う無口な女子。赤い髪の《コンピュータ少女》。
僕とユーリは双倉図書館(ならびくらとしょかん)で開催されているイベント《いにしえの数学》を見学中。
このイベントでは、さまざまな国の、古い時代の数学についてパネルが展示されている。
僕とユーリは古代エジプトのヒエログリフで書かれたチャレンジクイズを解いたところ(第182回参照)。
ユーリ「あー楽しかったね、お兄ちゃん!」
僕「うん、思ったよりずっとおもしろかった」
ユーリ「ヒエログリフの暗号を解読したみたい。ねー、次はどっちに行く?」
僕「それより、ミルカさんやテトラちゃんを探さなくちゃ」
ユーリ「だーいじょぶだって。会えるって。 それより、あっちの部屋を見てみよーよ! ……ばびろにあ?」
僕「バビロニアの数学? そうか、部屋ごとに時代がわかれているということなんだね」
僕とユーリは、古代エジプトの部屋からバビロニアの部屋へ移動する。
こちらの部屋にもたくさんのパネルが展示されていた。
そして、部屋の隅にある机では、 真っ赤な髪の少女がノートブック・コンピュータのキーボードを叩いていた。
リサである。
ユーリ「あ、リサ姉だ!
リサ「??」
僕「そうか、このイベントのスタッフ作業中?」
リサ「半分作業、半分趣味」(咳)
リサはキーボードの手を休めることなく僕たちを一瞬見る。 そしてまたディスプレイに目を戻す。
ユーリ「お兄ちゃん、こっちのパネルから見ていくみたいだよ。 《ばびろにあ》の数字」
バビロニアの記数法、
僕「これは
ユーリ「こっちに
バビロニアの記数法、
僕「なるほど。
ユーリ「なーんだ。ヒエログリフとおんなじなんだね」
僕「次のパネルは、
バビロニアの記数法、
ユーリ「これも似ているね」
僕「確かに似てるな。古代エジプトだと、縦棒が
ユーリ「予言者ユーリとしてはですなー、
僕「どれどれ?」
バビロニアの記数法、
ユーリ「ほらね、ほーらね! ばっちり正解さ! この調子で
僕「次のパネルは
バビロニアの記数法、
ユーリ「ごらんのよーに、予言どおりじゃ。わかったかの?」
僕「はいはい。次のパネルは
ユーリ「次のパネルでは、《くの字》が
バビロニアの記数法、
僕「惜しかったね。《くの字》は横に並んでないよ。予言者どの」
ユーリ「くっ……こ、これは、バビロニアの民の《でざいん》の問題じゃ。
だって、《くの字》を
僕「はいはい。えっと、次のパネルは
バビロニアの記数法、
ユーリ「想像通りじゃん。次の
僕「あれ?」
ユーリ「ほえ?」
バビロニアの記数法、
僕「
ユーリ「パネル、まちがってるんじゃない? 縦棒
僕「いや、まちがいじゃないな。だって、ほら、
ユーリ「そーだけど?」
僕「つまり、
ユーリ「そんなわけないじゃん。
バビロニアの記数法、
僕「ほら、
ユーリ「ほんとだ。うーん……あれれ?
僕「違うね。
バビロニアの記数法、
ユーリ「むむむ……だったら、ヒエログリフと違うってこと?」
僕「そうだね。ヒエログリフでは、
ユーリ「
僕「そういうこと。古代エジプトでは《位取り記数法》は使っていない。でも、バビロニアでは《位取り記数法》を使っている。 うん、そして、バビロニアでは《六十進法》を使っている」
ユーリ「六十進法」
僕「だって、
ユーリ「……ダウト」
僕「なぜダウト?」
ユーリ「だって、
僕「確かに。うーん……ともかく、パネルを進んでみようか」
ユーリ「あ、クイズだ」
クイズ
バビロニアの記数法を使うと、
僕「なるほど……」
ユーリ「
僕「わかった?」
ユーリ「たぶん。こうかにゃ?」
クイズの答え
僕「そうだね」
ユーリ「よかったー。
僕「こっちに解説パネルがある」
バビロニアの記数法における
ユーリ「あり? なんで、
僕「ほら、バビロニアの記数法は、やっぱり《六十進法》なんだよ。 この書き方をよく見てごらん」
ユーリ「(来たな《先生トーク》)」
僕「僕たちの《十進法》で《位取り記数法》のとき、各桁は
ユーリ「わーった。わかりましたよ。だから
僕「そういうことだね。さすが、ユーリは理解が早いな」
ユーリ「ちっちっちっ。お兄ちゃんは詰めが甘いにゃ」
僕「何のこと?」
ユーリ「お兄ちゃんは、《六十進法》という思い込みがあるから、 バビロニアの記数法、しっかり見てないよね」
僕「だから、何の話?」
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