登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。
テトラ「ユーリちゃんの気持ち、よくわかりますっ!」
僕「というと?」
ここは高校の図書室。僕は後輩のテトラちゃんに述語論理の話をしていた。 ちょうど先日ユーリと話していたのと同じ内容である(第174回参照)。
テトラ「《すべて》や《任意の》が省略されているのは困るというお話ですよね。
《実数を
僕「そうだね。ユーリからも言われたよ。『省略するなー!』って。 でも、話しているときにいちいち《任意の》を付けていると長くなってしまって、 何をいってるかわかりにくくなることもあるから……もちろん、 証明するときにはそこはきちんと理解しておかないとまずいけど」
テトラ「そういえば、あたしも《すべて》で迷ったことがありました。
いつでしたか、
僕「これは、満たすよね。
テトラ「はい。それはよかったんですが、 その後、こんな問題が……」
方程式
僕「なるほど?」
テトラ「
僕「そうだね。
テトラ「でも、それって、何だか引っ掛けられたような気がしました。
《方程式
僕「うんうん、テトラちゃんの考えはもっともだと思うよ。
『方程式
テトラ「はい……」
僕「別の問い方で『
テトラ「はい。もっとも……あたしは、 答えが一つだけ見つかったときに《他にはないかな?》と考えないのはまずかったと思いました。 《すべて》を問われているかどうかを意識するのは大事ですよね」
僕「そういえば、さっきテトラちゃんが言ってた『解は
テトラ「といいますと?」
僕「
テトラ「ああ、確かにそうですね。《または》の意味に……ええ? 《または》
なんですか? だって、この方程式の解は
僕「ええと……ああ、いやいや、《または》でいいよ。
テトラ「ははあ」
僕「《かつ》にしてしまうと変なことになるよ。
だって、
テトラ「ああ、確かにそうですね。納得です。 《または》なんですね……なかなか難しいです」
僕「うん。だったら《論理》の世界から《集合》の世界に移ると、 もっとわかりやすくなると思うよ」
テトラ「集合の……世界ですか」
僕「うん、そうだよ。 話を簡単にするために《実数全体の集合》の範囲で考えることにするね」
テトラ「はい」
僕「それで、さっきの方程式を実数
テトラ「はい……」
僕「それで、この述語に
テトラ「
僕「ここで、
テトラ「それはそうですね。
僕「《解いた》というよりも、
テトラ「ははあ」
僕「それで……たとえば円周率
テトラ「はい、わかります……あの、これは何をやっていらっしゃるんでしょうか」
僕「話が回りくどくなっちゃったね。
テトラ「
僕「具体的に書くと、こういう集合」
述語
テトラ「……」
僕「
テトラ「ということは、
僕「その通り。その確認はさすがテトラちゃんだね」
テトラ「は、はい。恐縮です……でも、 これってSo what?(だから、なに?)ですよね。ち、違いますか?」
僕「そうだね。方程式の解を集合で表しただけの話だから。 でも、これで集合の世界に移ったから、さっきの話の確認ができるよ」
テトラ「さっきの話……とは? すみません」
僕「ほら、方程式
《論理の世界》と《集合の世界》の対応関係
テトラ「ははあ……わかってきました!
僕「そう! それでその両方がきれいに対応しているんだ。
テトラ「うわわっ……なんだかいろんなものが繋がりますっ!」
僕「だよね」
テトラ「ちょ、ちょっとすみません。いまさらですけれど、
僕「うん、そうだよ。二つの集合の要素をすべて集めて作った集合になるね」
テトラ「はい、わかりました」
僕「
同値変形で
テトラ「同値な条件に……する」
僕「何か引っかかる? 同値変形ってよくやるよね?」
テトラ「いえ、はい、よくわかります。
あのですね。引っかかっていたわけではなく、
同値変形というのをしっかりとは意識してなかったな、
と思っていたんです。たとえば、
僕「ああ、そこか。
そうだね。計算としてささっとやるから、
確かに意識しないことは多いかも。
でも
テトラ「そうですね」
僕「そこが気になるなら、
テトラ「そうですね……因数分解して方程式を解くというのは、 当たり前のように計算してますけど、 論理的に考えると、条件を同値変形していることになるんですね」
僕「さっき、条件
条件
テトラ「これは?」
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