この記事は『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』として書籍化されています。
登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。
ミルカさん:数学が好きな高校生。僕のクラスメート。長い黒髪の《饒舌才媛》。
瑞谷先生:司書の先生。定時になると下校時間を宣言する。
僕「ともかく、答えをまとめてみるよ」
解答1(?)
数列
テトラ「……」
ミルカ「……」
僕「そうだ。具体例に進もうよ! 僕が具体例を持ってる。 先日、ユーリと遊んだときにちらちらと見えていた《波》だ。 この平らな波をフーリエ展開してみよう!」
ミルカ「ふむ、それもいいが、その前にやることがある」
僕「やること?」
ミルカ「この《解答1(?)》の誤りを一つ見つけること。フーリエ展開の可能性という話ではなく、単純な誤りを」
僕「単純な誤りがあるって?」
テトラ「……」
僕「収束条件ではないんだよね?」
ミルカ「フーリエ展開ができる
テトラ「あ、あのですね……《
ミルカ「テトラはそれを具体的に言う」
テトラ「あたしが計算していた定積分では、
僕「ちがうよ、テトラちゃん」
ミルカ「そこだよ、テトラ」
僕「あれ? 確かにさっきの解答では条件を付けなかったけど、
ミルカ「
僕「大丈夫。だって、
ミルカ「どんなふうに?」
僕「こんなふうに……ええと、要するに、
テトラ「それは先ほどやったような……(第149回参照)」
僕「うん、さっきは一般的にさらっと書いたから、
僕「これで
テトラ「……」
僕「次に、積分と和の交換。ここはほんとうはちゃんと証明が要るはずだけど」
ミルカ「……」
僕「この
僕「えっ!?」
テトラ「定積分の結果、
僕「
ミルカ「だから、そこが誤り。いま君が計算してくれたとおり、
解答1
数列
僕「うわ、
テトラ「条件を確認するのは大事なんですね……」
ミルカ「
僕「なるほど」
ミルカ「話が飛んでしまった。君がフーリエ展開したいといってた波があったね」
僕「そうそう。これはね、このあいだユーリと遊んでいたときに気になってた波なんだ。
ミルカ「ふむ」
僕「だから、こういう平らな波を考えてみたいんだ」
ミルカ「矩形波(くけいは)だね」
僕「矩形波? うん、だから、その矩形波のグラフを
ミルカ「それは確かに出てきそうだな」
僕「だよね」
テトラ「せ、先輩方! ただいま、テトラは置いてけぼりになりかけています! しばし、お待ちを! 頭を整理させてください」
僕「係数を掛けた上で加えるんだね」
ミルカ「線型結合」
テトラ「あ、そうでした。そうでした」
僕「数列
ミルカ「フーリエ係数」
テトラ「ですね!」
僕「そしてこれから、矩形波を実際に定積分して、ほんとうにフーリエ係数が求まるかを試してみようとしているわけだね」
テトラ「ふう……ようやく先輩方に追いつきましたっ!」
ミルカ「問題を立てると、こうなるな」
問題2
グラフが以下のようになる関数
とフーリエ展開できると仮定して、
フーリエ係数
テトラ「……先輩、でも、こんなにがたがたになった関数の積分なんてできるんですか? あたしができる積分というのは、
僕「うん、そうだね。僕たちがふだん問題で解くのはつながった関数……連続関数のことが多いけど、
これは大丈夫。積分区間で分けて考えればいいんだよ。
ほら、たとえば、
テトラ「……あっ、そうですね。定数関数の積分はあたしもできます! ははあ……ここにも《場合分け》が出てくるんですね」
僕「積分は結局は和なんだから、積分区間で足せばいいし」
ミルカ「まず、
僕「そうだね。まず
テトラ「ちょっとお待ちください。
僕「
ミルカ「ふむ。
僕「なるほどね。偶関数である
ミルカ「もちろん、いまは計算練習をしているわけだから、それは検算用の考えになるけれど」
テトラ「あ、あの、
ミルカ「
僕「
テトラ「……です」
僕「じゃ、今度は
僕「うん、やはり予想通り
テトラ「……先輩、この途中の式なんですが」
テトラ「これって、このようにマイナスを前に出すことができますよね?」
僕「うん、そうだね」
テトラ「だったら、同じ
僕「ああなるほど……じゃない、それはだめだよ、テトラちゃん。 そんなことをしたら、二つの関数を別の区間まで伸ばして積分してることになるから」
テトラ「え……?」
ミルカ「それでは伝わらない。テトラの混乱は、一般的に書けばすぐ解ける。 いまテトラがやろうとした積分の操作はこれだ。こんなことはできない」
テトラ「あっ、そうですね。うっかりしました。
ミルカ「ここまでで
僕「いよいよ
テトラ「あ、あたし、計算します! 式の途中までは先ほどと同じですから……」
テトラ「あ、あれれ……? あたし、計算ミスしてます?」
僕「どうして、そう思ったの?」
テトラ「だって、
僕「テトラちゃん、テトラちゃん、落ち着いて。さっき僕がいった
テトラ「だったら、なおさらです。
ミルカ「テトラは
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この記事は『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』として書籍化されています。
書籍化にあたっては、加筆修正をたくさん行い、 練習問題や研究問題も追加しました。
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