僕「ユーリ、なに遊んでるの?」
ユーリ「……」
僕「無言か。ゲームだな」
ユーリ「……いま忙しいから、あとで」
僕「ひとの部屋に来て『忙しいから』もないと思うんだけどな。何のゲーム?」
ユーリ「あっ! やられた! 話しかけないでって言ったのにー!」
僕「やっぱりゲームか。どんなの?」
ユーリ「お掃除ゲーム。この大きな丸いのを動かして、 この小さなフワフワを食べてくんだよ。 食べてくと、この丸いのはどんどん大きくなる」
僕「なるほど。時間内に全部食べればいい?」
ユーリ「そーそー。でも、大きくなると、角のが食べにくくなるから、 小さいうちに食べとかなきゃいけないの」
僕「やってみたいな」
ユーリ「お兄ちゃんは勉強で忙しいんでしょ? ……ま、一回だけなら貸したげてもいーよ」
僕「どれどれ……あれ? これは?」
ユーリ「うわー、いきなりレッド食べますか。それ食べるとしびれて動けなくなる。アウトー」
僕「知らないよ、そんなの!」
僕「食べるたびにこの円は
ユーリ「アール?」
僕「円の半径だよ。
ほら、円の方程式は
ユーリ「お兄ちゃん、こないだ円の方程式は
僕「それは半径が
ユーリ「あーそかそか。それだけのことね」
中心が
中心が
僕「ユーリのこのゲームだと、円がどんどん大きくなっていくよね。
ということは、この
ユーリ「
僕「そうそう。もちろん、そんなふうに正の整数の値を取らなくてもいいよ。
ユーリ「ふーん」
半径
僕「逆に
ユーリ「……」
半径
僕「ん? 何かおかしい? そんなに難しい話はしてないよね?」
ユーリ「ねーお兄ちゃん。
僕「
ユーリ「なに急に顔赤くしてんの?」
僕「赤くなんかしてないよ。
ユーリ「そっから先は?」
僕「先って?」
ユーリ「
僕「マイナス! 半径は長さだからマイナスにはならないね」
ユーリ「でも、
僕「うん、それはそうだなあ。もしも
ユーリ「ふんふん。
僕「そうなるね」
僕「だから、円の方程式
ユーリ「ふんふん」
僕「数式を見たときには、そこに出てくる文字が何を表しているかをちゃんと 確かめておかないといけないよ」
ユーリ「おー、ひさびさの教師トーク!」
僕「なんだそれ」
ユーリ「
僕「
ユーリ「お兄ちゃん、そーゆーの、練習してんの?」
僕「そういうのって何のこと?」
ユーリ「円の半径とか点の座標とか、さくさくさくって答えるじゃん。 劇の台本読むみたいに練習してんの?」
僕「そんなことないけど、数学の本読んだり、問題を解いたりするときに、
心の中で毎回確かめているからじゃないかな。
『この式の
ユーリ「へー」
僕「そうだ。さっきは半径
ユーリ「そーだね」
僕「今度は横に動かしてみよう。ほら、ユーリのゲームでも、 大きな丸いのが動いてた。円を右に動かしてみよう」
ユーリ「ほほー」
問題1(円を動かす)
方程式
この円
僕「どう?」
ユーリ「この問題って円
僕「そうなんだけど、そこをきちんと答えるのが大事。
円
ユーリ「だから、
僕「……」
ユーリ「
僕「違うんだよ、ユーリ」
ユーリ「違うの?」
僕「違うんだ。
方程式
ユーリ「でもね、お兄ちゃん。
点
僕「その通りだよ。ユーリ、それは正しい」
ユーリ「ねーお兄ちゃん。何か気分悪い」
僕「どうした?」
ユーリ「何だかお兄ちゃん、ユーリがまちがっているの楽しそうなんだもん」
僕「違う違う。お兄ちゃんはユーリがまちがうのを楽しんでいるんじゃない。 お兄ちゃんも、ユーリと同じまちがいをしたの、思い出したからなんだ」
ユーリ「へー?」
僕「点
点
ユーリ「うん」
僕「でも、円
円
ユーリ「うわー、納得できなーい」
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