この記事は『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』として書籍化されています。
ユーリが持ってきた《時計パズル》には、変な時計が $3$ 個ついている。
《$2$ の時計》と《$3$ の時計》と《$5$ の時計》だ。
リセットボタンを押すと $3$ 個の時計はすべて $0$ を指す。
そしてカウントボタンを押すたびに、 $3$ 個の時計すべてが $1$ ずつ進む。
ユーリ「お兄ちゃん。問題はこーだよ」
時計パズルの問題
リセットボタンを押すとパターン $0,0,0$ になります。
ここからカウントボタンを何回押せば、目的のパターン $0,2,4$ になるでしょうか。
僕「《カウントボタンを押した回数とパターンの一覧表》を作れば解けるよね」
ユーリ「えー、めんどいじゃん!」
僕「表を作るのは大事なんだよ」
ユーリ「計算でバシっと解けないの?」
僕「そうだなあ……」
ユーリ「時計が $1$ 個なら簡単なんだけどにゃ……」
僕「そりゃそうだ……ん?」
ユーリ「へ?」
僕「時計を $1$ 個にすればいい! うんうん。時計を $1$ 個にして、 $1$ を作ればいい!」
ユーリ「お兄ちゃーん、日本語でお願いしまーす!」
僕「じゃあ、ちゃんと話すよ。ねえユーリ。ユーリが持ってきたこの《時計パズル》は、なぜややこしいんだろうか」
ユーリ「へ? ぐるぐる回るからっしょ?」
僕「確かにそうだ。ぐるぐる回るからややこしい。でも、ユーリが言ったように《時計が $1$ 個》だとしたら話は簡単だ。ややこしくない」
ユーリ「だって……」
僕「たとえば《$5$ の時計》が $1$ 個だけだとしようか。 それなら、《$5$ の時計》に指させたい数字の回数だけカウントボタンを押せばいい。 $4$ にしたいなら、カウントボタンを $4$ 回押せばいい」
ユーリ「そりゃ、そーだけど……」
僕「さらに、 $4$ 回押した後、 $5$ の倍数だけさらに追加で押してもいいね。 $4$ 回押した後、 $5$ 回押しても、 $10$ 回押しても、 $15$ 回押しても、《$5$ の時計》は $4$ を指したままだ」
ユーリ「それは、 $5$ 回押せばぐるっと回るからだよね?」
僕「そうそう。カウントボタンを $5$ 回押すごとに《$5$ の時計》はぐるっと戻って $0$ を指すから」
ユーリ「でもさー、《時計パズル》には時計が $3$ 個あるんだから《時計が $1$ 個なら話は簡単》……なんて言ってもしょーがないじゃん!」
ユーリは腕組みをしてふむっと鼻を鳴らした。
僕「うん、そうなんだけど、《こうだったらいいのになあ》と願うのはとてもいいことなんだよ」
ユーリ「なんで?」
僕「つまり、それが問題を解く《手がかり》になるからなんだ。考えを進める方向が少し見えたことになる。 ミステリーと同じだよ。手がかりをしっかり捕まえて……」
ユーリ「ミステリーもいーんだけどさー。この《時計パズル》ではどーすんの? $3$ 個の時計を $1$ 個にする方法なんてないじゃん?」
僕「あるんだ。 $3$ 個の時計を $1$ 個にする方法はあるんだよ!」
ユーリ「は? $3$ 個の時計を $1$ 個にする?」
僕「ほら、お兄ちゃんがカウントボタンを押してたら、ユーリがストップを掛けたよね。ちょうど $6$ 回押したときだ(第19回参照)」
ユーリ「うん」
僕「リセットボタンを押すとパターン $0,0,0$ になる。そこから始めて $6$ 回カウントボタンを押すと、パターン $0,0,1$ になるよね」
パターン $0,0,0$ から $6$ 回カウントボタンを押すと、パターン $0,0,1$ になる
ユーリ「そーだけど」
僕「パターン $0,0,1$ だと、《$2$ の時計》と《$3$ の時計》はどちらも $0$ になっていて、 《$5$ の時計》だけが $1$ になってるよね」
ユーリ「それがどしたの?」
僕「僕たちは《$2$ の時計》も《$3$ の時計》もぐるぐる回って $0$ に戻ってきたことを知ってるけど、 そのぐるぐるは、あえて見なかったことにする」
ユーリ「見なかったことにする?」
僕「そうだよ。そして改めてパターン $0,0,1$ を見ると、 まるで、《$2$ の時計》と《$3$ の時計》は止まっていて、《$5$ の時計》だけが $1$ 進んだように見えないかな」
ユーリ「むむむむ! 確かにそー見えるけど!……見えるけど……見えるけど?」
僕「そうなんだよ。僕がさっき《時計を $1$ 個にして、 $1$ を作ればいい》といったのはこのパターン $0,0,1$ がひらめいたからなんだ」
ユーリ「お兄ちゃん、ユーリ、わかんないよ。何のことを言ってるの?」
僕「ちゃんといえばこうだよ」
パターン $0,0,0$
↓ カウントボタンを $6$ 回押すと《$5$ の時計》だけが $1$ 進む
パターン $0,0,1$
ユーリ「それはわかってるよ! だからなんなの!」
僕「パターン $0,0,1$ から、さらに $6$ 回押したら、パターン $0,0,2$ になるよね?」
パターン $0,0,1$
↓ カウントボタンを $6$ 回押すと《$5$ の時計》だけが $1$ 進む
パターン $0,0,2$
ユーリ「あっ、わかった! お兄ちゃんの言いたいことがわかった! $6$ 回押すたびに、《$5$ の時計》だけが、 $1$ ずつ進むってことだね!」
僕「そうそう、そこだよ。 $6$ 回押すたびに、《$5$ の時計》だけが、 $1$ ずつ進む。 他の時計はまったく動かないと見なしてもいい。 《$6$ 回まとめて押す》のを何回か繰り返せば、他の時計をまったく動かさないままで、《$5$ の時計》を好きな数まで進められるよね!」
ユーリ「うん、そーだね!」
僕「《$6$ 回まとめて押す》のをひとまとまりとして考えれば、時計は $1$ 個しかないのと同じだ。だって《$5$ の時計》しか動かないんだから」
ユーリ「そっか……むむむむ! もしかして、お兄ちゃん!」
僕「ユーリ、気づいた?」
ユーリ「もしかして、お兄ちゃん、 $3$ 個の時計を、 $1$ 個ずつ合わせていくつもり?」
僕「正解!」
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この記事は『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』として書籍化されています。
書籍化にあたっては、加筆修正をたくさん行い、 練習問題や研究問題も追加しました。
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